hachi_08 hachi_08

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米津玄師 kenshi yonezu  🖕🏻

最高

突発的に開かれた飲み会を終え、帰りの扉を開けると、朝の日差しと一緒に煙たいくらいに冷えた空気が鼻の奥を刺す。店に着いた真夜中の頃とは明らかにルールが変わってしまった街をフラフラ歩きながら、猥雑に流れるBGMから逃げるようにして帰る。なんとなく夏のジリジリした湿っぽい感じが恋しくなって、夏っぽい曲を聴きながら何か半年後の予定でも立てようかとあれこれ思案していく。そのうちに、いつか誰かに言われた「お前は病的に計画を立てるのが下手だ」という言葉にぶち当たり、今度はそこを直さなきゃなと、自分のことのくせに人事のような、プロトタイプのモビルスーツを扱う整備士みたいなことを思う。楽しいことがしたいね。

リビングの明かりを点けたら 、バチっと大きな音を立てて、最後に一瞬の閃光を残したまま二度と灯らなくなった。何かが死ぬ瞬間っていうのは得てしてこういうもんなのだろうと勝手に納得する。去年の暮れから人の死をずっと見つめ直していたから尚更だ(Lemonはいい曲になった)。人生が続いていくにあたり、そりゃあみんな当たり前に歳をとって劣化していくもので、そのうちの一つ、また一つと目の前を通り過ぎていくたびに、身の回りには様々な死が潜んでいることに気がつく。おいそれと「新キャラが登場しました」というわけにはいかないからこそ生きるのは面白いのに、人間は可愛いのでそんな当たり前のことさえも忘れようとする。彼らはまたどこか知らないところで元気にしているだろうか。形をなくしてしまったもの、 目には見えなくなってしまったものの輪郭を何もない空中でなぞることによって、それを浮かび上がらせて取り戻そうとする。畢竟、自分が音楽を作る理由はそういうところにある気がする。

この間いい感じの腕時計を見つけたので、衝動的に買ってみて、なかなか気に入ってたんだけど、たぶん失くした。そんなことも一年後には綺麗さっぱり忘れてしまっていると思うので、ここに書き記しておく。

爱丽丝

深夜にはなんとなく許しの空気があって、それが好きでよく夜更かしをする。コンビニや飲み屋には漂う気だるさがあって、客にも店員にもほとんど温度がない。社会の機能が鈍り、スロウになった歯車の隙間をするりと通り抜けて、どっかの知らない校庭に忍び込み、夜露で濡れた芝生にケツを濡らしながらぼんやりする。デタラメな言葉も怠惰もそこでは全部輪郭がぼやけていて、今まで呼吸が浅かったことにようやく気づける感じ。自由ってのは基本的に何かと何かの隙間にしかないもので、岩の裏に住む日陰のダンゴムシにとって、歯車が正常に機能し始めるまでのわずかな深夜の隙間だけが、外に這い出すことを許されるフィーバータイム。だもんで、深夜は詞を書くのが捗ります。

自分の弱さを言葉にして切り売りするわたしにとって、明るい陽の下で詞を書くのはだるすぎる。ニコニコするのにもMPは使う。何かにつけて許されていないと声も出せないことをよく知っている。その昔、周りの人間たちの放つ言葉がどういう意味なのかさっぱりわからなくて、なんとなく曖昧に笑ってばかりいたら「きみは笑ってばかりだね」と言われたことを憶えている。あのころからどっか見よう見まねで生きている感覚が根底にあって、はたして自分は許されているのかいないのか、そういう端から見れば瑣末な、しかし当人にとっては重大な問題を紐解いていくことに夢中だった。

わたしは今まで自分が作った音楽を通してたくさんの人から言葉をもらった。良いも悪いも珠玉も怨嗟も色とりどりで、それによって今の自分があり、そのすべてに感謝の気持ちがある。しかしその奥のほうには、何一つ言葉を持たないやつがいることをわたしは知っている。「僕は苦しいです」「あなたが好きです」と表明するだけの言葉すら持つことを許されていない人間がいることを知っている。今はそういうやつにこそ音楽を届けたい。きっと大丈夫だと言ってやりたい。世の中そんな大したもんじゃないと教えてやりたい。わたしだってここまでこれたもの。

静かな隙間で音楽を聴いていた記憶が今なお自分を定義づけている。音楽がきっと許してくれる。大丈夫、大丈夫、大丈夫。

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